キャンプ3日目

3日目はいよいよクライマックスです!高草山登山、リース遠征隊上映&講演会、懇親会を行いました。

【登山 その1(お寺から笛吹段公園まで)】

地元焼津のたくさんの山登りボランティアの方たちが集まってくださり、気温が高くなってしまわないよう早朝にお寺を出発して高草山登山に出発しました。車椅子ユーザーは車にて笛吹段公園まで移動し、それ以外の方はまずお寺から笛吹段公園までの登山に挑みました。前日までの蓄積疲労もあるため、早く登れない人を周りがサポートし、なんとかみんな笛吹段公園までたどり着くことができました。笛吹段公園からの景色は最高で、お茶畑や焼津の街並みを一望することができました。僕は車で行ったので単純に「きれいな景色だなあ」と思ったのみでしたが、お寺から歩いてたどり着いた方たちはきっと「がんばって登ってよかった~」と思える感動の景色だったに違いありません。

【登山 その2(笛吹段公園から山頂まで)】

朝食を笛吹段公園でとり、車椅子ユーザーは各自の車椅子にJINRIKIという特別な装置を装着し、いよいよ車椅子ユーザー5人も含めた登山の開始です。車椅子ユーザー一人に対して屈強なデンマーク人数人と焼津の山登りボランティアの方たち、キャンプの日本人参加者数人が大きな一つのチームとなり高草山を登り始めました。

始めは舗装された広いアスファルトの道であったため、ハイペースでどんどんと進んでいきました。登っている最中、自分は車椅子を進ませることはできませんが、声を出して盛り上げることはできます。ちょっとやかましかったかもしれませんが、「疲れてませんか?」とか「ここでちょっと休憩しましょう!」や「いい景色ですね~」と声を出すこと、周りを見ることをがんばりました。なるべくただみんなに連れていってもらう存在でなく、一緒に山を登るチームのメンバーになれるよう、自分のできることを探しました。

そうしてだいぶ登ったところで分岐点に到着しました。そこから山頂までは舗装された道はなく、普通に歩ける人でもしんどい山道です。そして道が狭いので、登り始めたら引き返すことはできません。今来た舗装された道を引き返して下山するのか、どう見ても車椅子で登っていくのは無理そうな山道に挑戦するか、選択は車椅子ユーザーに任せられました。

下見をしたスタッフや山に詳しいボランティアの方たちからいろんな情報を聞いた結果、普通に考えたら車椅子で登るような道ではないことが分かりました。しかし、それをなんとかして登りたいという気持ちもどんどん湧いてきました。仲間もみんな「修平さんが登るって言ったら俺たちは絶対山頂までつれていきますよ!」と言ってくれました。

ここで僕が登らなければ、車椅子ユーザーは誰もチャレンジすることなくこの登山は終わってしまうのではないか、という実行委員のひとりとしての役割もありましたが、なにより自分は「この仲間たちと一緒に登りたい!」という気持ちがマックスに高まり、「みなさん、チーム修平、山頂行きましょう!」と宣言しました。そこからは僕自身の責任でもって山頂までチャレンジすることになります。それがエグモントで学んだ自己決定、自己責任の考え方で、これによって僕は多少リスクのあることも挑戦することができます。

山道を登り始めてすぐにこれは大変なチャレンジを始めたんだなとわかりました。道幅は車椅子の幅より狭く、下は大きな石や木の根っこがたくさん、急な斜面は土で足が滑りふんばりづらい、など全員が一瞬も気が抜けない道が何十分も続きました。自分自身が斜面に転げ落ちる可能性もありましたが、僕を支えているひとたちが僕をかばって怪我をすることも十分考えられ、細心の注意を払いながらみんなで声を掛け合って、少しずつ山頂まで登っていきました。

険しい道で頼りになるのはやはりリース遠征隊で北欧最高峰のガルフピッゲン山に登頂経験のあるアーネの存在でした。アーネがいつも的確に最適なルートや身体の使い方、休むところ、一気に行くべきところ、注意するところを指示してくれたおかげで安全に進んでいくことができました。

 最後の最後まで気を抜けない道が続きましたが、ようやく高草山の山頂に到着しました。全員で「着いた~!!」とガッツポーズをし、僕はもう【とんでもない経験をさせてもらった】と感動の涙が出てきました。車椅子の人間が仲間と一緒に山を登ることはこんなにもすごいことなんだ、と自分が経験してみてはじめてわかりました。

日本人の車椅子ユーザーは4人とも無事に山頂にたどり着き、みんなくたくたになりましたが、大きなチャレンジを成功させることができました!

【リース遠征隊上映&講演会】

登山の後は、まさに我々にタイムリーなテーマであるドキュメンタリー映画「リース遠征隊」の上映&講演会です。ウェルシップ焼津で行われ、広いホールはキャンプ参加者と焼津の方々でいっぱいになりました。

映画の前は僕がデンマークのこと、エグモントホイスコーレンのこと、映画の見どころなどを説明させていただきました。

僕は今まで何度もこの映画は見ていたのですが、自分自身が午前中に車椅子登山を経験してきたことや、リース遠征隊と一緒にキャンプをしていることにとても幸せを感じ、映画も5倍くらい感動しました(※ちなみに、チーム修平は高草山502mの最後の100mくらいを登山。リース遠征隊はガルフピッゲン山2469mに挑んだ)。

映画の後はリース遠征隊と映画監督のマティアス、エグモント教員でこのキャンプの主催者であるりえこさんが通訳として、トークセッションが行われ、非常に盛り上がりました。

今回のキャンプはもともと昨年(2016年)の秋に日本で行われたリース遠征隊上映&講演会に参加された方の

「車椅子に乗っている障害者だけど、実はカヌーに乗ってみたい!という夢があります。」
「自分もリース遠征隊のように信頼できる仲間がほしいです。」
「リース遠征隊のみなさんともっとお話ししたいです。」
「エグモントホイスコーレンという学校をもっと詳しく知りたいです。」

という声がきっかけで企画されました。

僕を含め日本人参加者は、この声の内容は今回のキャンプで実現できたのではないかと思います。本当に幸せなことです。 

今度はこのキャンプをきっかけにして、また次の何かが生まれるかもしれません。ヤコブ・リースとその仲間たちの挑戦が日本の障害がある人やその仲間たちに大きな影響を与え、今後もその波紋がゆっくりと広がっていくことを期待します。もちろん僕もその波紋の一部になるつもりです。(北海道でこっそりと)

【懇親会】

ついにキャンプも最終夜となりました。サッポロビール静岡工場のガーデンハウスにて、懇親会をさせていただきました。マグロの解体ショーや寿司職人による実演調理でデンマーク人はもちろん、日本人も大いに盛り上がりました!

ごはんが落ち着いたところで、キャンプで活躍したひとたちへの表彰式が行われました。釣りで活躍された方、登山を頑張った方、みんなをハッピーにさせてくれた方などなど、みんなが納得の人気者の受賞者なのでした。

そしてキャンプ主催DSSAプロジェクト代表のりえこさんから、実行委員ひとりひとりにご苦労様の素敵なプレゼントが授与されました。僕はキャンプ中ほとんど実行委員らしいことをすることができませんでしたが、キャンプの実行委員の一人としてこのキャンプに関わることができて本当に良かったです。

キャンプ参加者は3泊4日の期間中で本当に親密になり、障害のある人もない人も、デンマーク人も日本人もとっても仲良しになりました。きっとこのキャンプを経験したことで、キャンプが終わってみんなが離れ離れになってもいつまでも僕らの心の中には共通のキーワード「エグモント」を持ち続けることができるのではないかと思います。そしてもちろん「焼津 YAIZU」も!


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